Brainwoods Staff Blog

幻想のロシアアニメーション

つい最近とても可愛いアニメーションを見つけてしまいました。Yuriy Butyrin監督の「Autumn Ships(1982年旧ソ連)」という9分の作品です。冬ごもりをするのが寂しいハリネズミの子は、水汲みの道中で出会ったオオカミのおじいさんに落ち葉と小枝で舟をこしらえてもらいます。嬉しさのあまり空を飛んで家に帰り、水を貯めた桶に小舟を浮かべると、空想の中で部屋の中は海に変わる。波はザブーンとハリネズミをベッドへ運び、そのままスヤスヤと眠りにつく、というお話です。秋冬を迎える小さな生き物が見た幻想が詩情豊かに描かれており、自分もちょっと小舟を作ってみたいような気分になってきました。 私が初めて見たロシアアニメーションは「森は生きている(1956年)」です。森で主人公が12ヶ月の精にもらった指輪を凍った湖面に落とすと氷が溶け、春の花が一斉に咲き始めるシーンに夢中になったことを覚えています。とても愛らしい、今でもお気に入りの作品です。それからかなりの年月が経ち、ユーリ・ノルシュテインの「話の話(1979年旧ソ連)」という短編映画を見る機会に恵まれました。幼少の頃の記憶の断片をつなぎ合わせたような、ストーリーがはっきりとあるものではなく、白昼夢のような映像が続きます。光と影をアニメでこんなに美しく表現している作品を私は知りません。 宮崎駿監督は「雪の女王(1957年旧ソ連)」に多大な影響を受けたといいます。原作は「人魚姫」「赤い靴」と同じくアンデルセンで、驚くべきことに公開から60年以上も経っているのに色褪せることのない名作です。メルヘンチックな風景や魅力的なキャラクターたち、まさに魂を吹き込まれたように生き生きとしています。仮にこれもスタジオジブリ作品だと言われたとしたら信じてしまったかもしれません。 昨今はCGを駆使したアニメが沢山作られていて高い技術力に驚きを覚えますが、個人的にはあまり好みではなく、やっぱり求めるのはひと昔前の詩的な表現や味のある絵だな、と実感しています。テクノロジーに頼らない優れた表現力は、幻想の世界へと引き込んでくれるきらめく鍵のようなものであると思います。これからもまた隠れた名作にふと出会えることを期待しながら、秋を迎えようかな。 翻訳事業部 久戸瀬