Brainwoods Staff Blog

おばあちゃんのケータイ

こんにちは。映像翻訳部の井上です。今日はうちの祖母についてお話ししたいと思います。 私の祖母は現在89歳、来年には卒寿を迎えます。足は少々弱ったものの、かかりつけ医に「井上さんは、その歳で悪いところがひとつもないね」と言わしめた健康体。趣味は相撲鑑賞とドラマ鑑賞と編み物と麻雀。パーマをかけた髪は藤の花のような紫色という、地元老人会では右に出る者のいないハイカラ婆さんです。 そんな祖母が80歳のとき、傘寿の誕生日プレゼントとして、父が携帯電話を贈りました。当時は愛車(三輪自転車)で何処へでも繰り出していた祖母ですが、そうは言っても高齢ゆえ外出先で何があるか分かりません。緊急連絡先として、かんたんホンの3つしか登録できない電話帳に家族の連絡先を入れ、何かあったときのために持っておいてと渡したのです。 それから数ヶ月ほど経って、祖母から父に連絡がありました。 「こんなちゃちい携帯電話じゃ役に立たないから、 たくさん番号が登録できて、液晶画面がついてるやつに変えて」 確かに、広い交友範囲をもつ祖母には、家電話の子機のようなシロモノでは まったく物足りなかったのでしょう。 さて、そんな祖母が新しい携帯電話を手に入れて数年経ったころでした。祖母の家でたわいのない話をしていたとき、メールの話題になりました。「あたしもこんなケータイじゃなきゃメールくらいできるのに」という祖母の携帯電話を見てみると、ちゃんとメール機能がついています。長年、そうとは知らずに使わないままだったのです。早速メールアドレスを登録して、私の携帯電話からメールを送ってあげると大喜び。こうして、祖母の新しい遊びができました。 それから数ヶ月は、週に一回くらいのペースでメールが来ていました。さすがに漢字変換は難しかったらしく、文面はすべてひらがなでしたが、きちんと意味も伝わるメールです。80代にしては大したものです。しかし、しばらくして、こちらからメールをしても返信がこなくなりました。そのときは、「まあ、用があるときは電話してくるし、飽きちゃったんだろうな」くらいに思っていました。 ある日、祖母にそのことを尋ねてみて、真相が明らかになりました。祖母は子供のころ、「あいうえお」ではなく「いろはにほへと」でひらがなを習ったのだそうです。つまり、「え」という文字を打つには「あ」のキーを4回押すという、我々には当たり前のルールが、祖母にとっては当たり前ではなかったのです。それでも最初のころは、小学校1年生の教室に貼ってあるような「あいうえお表」を自作し、メールを打 つたびにそれを参照していたのだそうです。でもだんだんと楽しさより面倒のほうが立ってきて、メールをしなくなってしまったとのこと。 なるほど。世のご老人が携帯電話を使いこなせない原因の一端は、その辺りにあるのかもしれません。ならば、高齢者向けのかんたんホンには「いろはキー」なるものを搭載したらどうかしら? 指の運動は脳の刺激になるので、ボケ防止にもいいのでは。Siriを搭載すれば、孤独な老人のいい話相手になったりして。1日1回会話がなかったらSiriから家族にメールが来るとか…… 何だか話が脱線しはじめたので、今回はこのへんで。いやー、日本語って本当に面白いですね!(^o^)